番組審議会

番組審議会とは

放送法に基づき、放送番組の適正を図るために外部有識者の声を聴く場として設置しています。
主な役割は、

・放送番組の適正を図るため必要な事項を審議する、
・放送局に対して意見を述べる

ことなどとなっており、番組審議会が取りまとめた「答申」や「意見」は放送局がこれを尊重して必要な措置を講じます。
また具体的な番組の視聴・聴取も行われ、放送局はその議論や意見交換を次の番組作りに役立てています。

審議委員名

委員長    坂 本   徹 ( 北里大学 獣医学部 教職課程 教授 )
副委員長 平 間 恵 美 ( NPO法人はちのへ未来ネット 代表理事 )
  川 嶋 大 史 ( つがる市観光物産協会 会長 )
  上 村 鮎 子 ( 十和田乗馬倶楽部 代表取締役社長 )
  平 野 陽 児 ( 東奥日報社 執行役員 デジタル局長 )
  成 田 幸 男 ( 陸奥新報社 代表取締役社長 )
  粒 来 和 成 ( デーリー東北新聞社 青森支社長 )
   

12月番審①

12月番審②

12月番審③

12月番審④

第668回番組審議会

青森放送では、12月8日に  第668回番組審議会を開催し、下記議題番組を審議しました。

ラジオ番組( 5月25日(日)11:05 ~ 12:00 放送 )
『 あなたと見た風景

            ~ 目の見えない初江さんと時のうつろい ~ 』    

 

【番組内容】                                                                    

全盲の内田初江さんがラジオ番組『RAB 耳の新聞』を引退したのは7年前、78歳のとき。 記憶力が落ち、視覚に頼らずに番組を構成することが難しくなり、みずから身を引きました。 引退後は、夫で同じく視覚障がい者の利男さんと助け合いながら、晴眼者と変わらない日常生活を続けてきました。

 

長年、利男さんが家庭の様子を録音テープに記録してきたように、初江さんは風景の一コマを31文字の短歌に詠んできました。2行の点字に指先を触れると、そのときの記憶がよみがえります。紙に打つと修正が出来ない点字は思いつくままの散文が書きにくいため、短歌のほうが気軽で、スナップ写真の代わりにもなります。

 

初江さんは冬が苦手だといいます。音が雪に吸収されるため周りの様子を感じにくくなり、気持ちが落ち込むからです。そんな2022年の冬、利男さんが体調を崩して入院します。心配していた娘の陽子さんが大阪から駆けつけますが、目の見えない初江さんは夫の身体の変化に気付いていませんでした・・・。

 

初江さんを取材してきた番組『あなたと見た風景』はシリーズ3作目となりました。85歳となった今、独りで暮らす彼女はもう昔のことや思い出にはこだわらないといい、日々充実した生活を送っています。一方で、10歳まで目が見えていた彼女の記憶のなかに、今も消えない風景はあるのでしょうか。初江さんの日常に寄り添いながら、マイクを通して紐解いていきたいと考えました。

 

 

2025年日本民間放送連盟賞 ラジオ教養番組部門 優秀賞 受賞作品

審議委員からの感想・意見

  • 視覚障がい者への寄り添いがRABの背骨のひとつになっている。長年の蓄積があるからこそ深みのある番組に仕上がったのだろう。ひとつのメディアが1人の人物を数十年にわたって取材し長く追い続けるのは、そうあることではないので凄いと感じた。音で残している娘の成長記録など、内田家の貴重な音源が心に響く。惹きつけられる様々な音素材が融合することによって番組に深みが生まれた。まさに寄り添うナレーションで良かった。ピアノのBGMは非常に効果的だった。ゆったりと淡々と流れていくが、それだけに表面的ではなく、心の奥底に響いてくる感じがした。テーマが盛りだくさんだったが、初江さんを取り上げるにあたって必要だったのだと思う。ラストシーンは感動的ですばらしかった。
  • 初江さんと利男さん夫婦が庭で過ごす穏やかな様子から始まるオープニングは映像が浮かぶようで2人の生活や人柄をあたたかく伝えてくれる良いシーンだった。視覚障がいのある2人がどのように日常生活を営んでいるのかを頭の中で映像化できるように伝えている。目が見えないということは、生活を支えるうえで知恵と工夫と夫婦の信頼で築かれているのではないかと想像させられた。視覚障がいのある親がどのように子育てと向き合ってきたのかについて深く知る機会になった。声・音・ふれあいを積み重ね、周囲からの指摘を素直に受け止めて我が子に伝え続けたことは愛情表現だったと実感。利男さんが録音し続けたのは我が子の成長記録に留まらず、愛情の保存・記録になっている。初江さんの人生観が力強く、タイトルも含め、すてきな番組だ。
  • 取材している夏目さんの何気ない会話が自然で信頼されているのが分かる。ナレーションにも安心感がある。雪や風の音など様々な効果音で情景が目に浮かぶのは構成の巧みさだと感心しながら聞いた。全盲の両親の子育てを想像して凄いと感じた。「お化粧をするとお出かけの気分になる」と初江さんが話す場面等では、化粧品の匂いや気分が高揚する様子が伝わり2人の生活をかいま見るようで面白くなっていった。雪かきのシーンには非常に驚いた。コロナ禍の最中に利男さんが他界し初江さんが泣かなかったと聞いて、覚悟ができていたのだろうと思った。初江さんの目が見えていた時の記憶が戦時中のものだけという残酷さを重く受け止めた。初江さんが世界の平和を祈っていると言う結びに、このシリーズの集大成となる番組だと感じた。
  • 穏やかだが重みがあり、長い間寄り添って密着したからこそ成り立つ、心ある番組だと思う。庭先での夫婦の会話から始まり、最後もその会話に戻って終えた構成は中身が豊富で流れも良く効果的だった。娘の陽子さんの成長を録音し残した家族の姿が印象的で子育てをする親の思いは同じだと感じた。子育てに必死だった若い頃の初江さんの声と、陽子さんが子どもながらに、母が娘に厳しく接していた理由を理解していたことがよく伝わった。様々な困難も夫婦2人だから乗り越えられたのだろう。コロナ禍で入院した父に娘がボイスレコーダーで好きな音楽と近況を届ける内容は、まるでラジオ番組を聞いているようですてきだった。初江さんの短歌も感受性が豊かで印象的。ラストで「ラジオが耳印なのよね」と言った初江さんの言葉に納得した。初江さんが社会全体をどんなふうに感じているのかについても聞いてみたいと思った。
  • ラジオ番組「RAB 耳の新聞」を引退してからこれまで、全盲の初江さんにとっては激動の7年間だったのだろうと番組を聞いて思った。夫の利男さんと紡いできた日常があり、そこに利男さんの体調変化が影を落とし、それに気付けなかった悔恨があり、コロナ禍での寂しい別れがあり、徐々に進行していく自分の老いを感じる…デイサービスでの何気ない会話の中に自作の短歌を思い出せない場面があったが、それが「今」の初江さんなのかなと思った。初江さんの日常に寄り添う形に徹したことが聞く側にじんわりと深く考えさせる効果につながっている。社会との距離についても考えさせられた。「音の持つ力」「ラジオの特性」が生かされた番組。7年を描くうえで様々な場面がうまく構成されていた。暮らしぶりが目に浮かぶようで、「音」が語る番組だった。
  • 映像がないのに、しっかり映像が浮かぶ番組。言葉の力・言葉の重みを感じるラジオならではの番組だった。タイトルにある「時のうつろい」が、ゆったりとした流れで見事に表現されていた。「大丈夫、大丈夫、全然大丈夫」と話す利男さんの言葉が最初と最後の場面に出てくる構成に感動した。初江さんの短歌も効果的。素材をうまく使って組み立てているのだと実感した。利男さんの入院中に、娘の陽子さんがボイスレコーダーで声と思いを届ける場面は、ドラマや映画のようで涙が出てきた。陽子さんの実情を強調し過ぎずにサラリと伝えたことでうまく流れをつかんだと思う。利男さんの「大丈夫」の言葉は家族への励ましであり、リスナーに送るメッセージでもあると受け止めた。家族愛や人間の優しさが伝わる秀逸な番組だった。
  • 初江さんが頭の中で見ている景色を再現してくれたのではないかと思うほど、本当に映像が浮かんでくるようだった。力みがなく自然体で陽だまりのような雰囲気の番組。丁寧な取材の効果もあると思うが、編集技術も秀でている。その技術の高さを聞く側に感じさせずにサラリとやっているのが凄い。夏目さんの持つ雰囲気、性格、取り組む姿勢が内田さん夫婦に伝わり、常に自然体で長期取材してきたからこそ、2人から信頼を得たのだと思う。RABの制作姿勢を非常に感じる番組だった。初江さんの短歌で
    「見えぬ目に りんどうの紫 浮かべつつ 求めし一鉢 玄関に置く」という一首は特に感性の高さがすばらしく脱帽した。「大丈夫」という利男さんの言葉は力強い励ましでもあるが、「今のままの社会でいいのか」と私たちに問いかけているようにも感じた。心にしみる番組だった。
次回の番組審議会は 2月上旬を予定しています。

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