「名前を消してしまうと一生の恥に」故郷・青森市では記念館が閉館…疎開先の富山では“街ぐるみ”で息づかい残す 顕彰のあり方は…
ことしは棟方志功の没後50年の節目の年です。
故郷・青森市では功績をたたえる志功記念館が去年閉館しましたが、疎開先の富山県では記念館や住居が街ぐるみで大切に残されています。
青森市出身の板画家・棟方志功。
大胆で力強い、独創的な表現で「世界のムナカタ」として活躍しました。
1975年志功が亡くなった2か月後。
文化勲章受章を記念して、青森市松原に棟方志功記念館がオープン。
48年間で195万人が作品や功績に触れました。
しかし…
★「どうもありがとうございました」
去年建物の老朽化などで閉館しました。
★青森放送 能代谷俊朗記者
「板画家・棟方志功を語る上で欠かせないのが疎開先として移住してきたここ富山での生活です」
富山駅から車で1時間、南砺市福光です。
志功は1924年画家を志し上京、その後、疎開で1945年から家族で福光に移りました。
富山駅から車で1時間、南砺市福光です。
志功は1924年画家を志し上京、その後、疎開で1945年から家族で福光に移りました。
福光は40代の志功が6年あまりを過ごした「第二のふるさと」です。
街のあちこちに志功の「息づかい」が感じられます。
★南砺市民
「(棟方志功が)こちらに住んでいたことを誇りに思っている」
「本当になくてはならぬ 影響を受けていますよ ずっと作品を大事にしていきたい」
記念館の今後を考えるため、青森商工会議所のワーキンググループが今月、富山県のゆかりの地を視察しました。
★躅飛山 光德寺 髙坂道人住職
「当時(寺の)座敷の6枚の襖絵でした。大きな松、巨松を描きたいということは決めていたそうです。散歩されていて急にひらめかれた(棟方志功)先生いわく、いちもくさんに走って来て一瞬で描き上げたと」
「柳(宗悦)先生は(棟方志功が)疎開した年に、この寺に来て『棟方の絵が断然良くなっている』と」
★青森放送 能代谷俊朗記者
「棟方志功記念館は故郷の青森市以外にもありました。それがこちら『愛染苑』です。道路を渡った向かい側には志功が家族と暮らしていた住居も残されています」
1982年に開館した「愛染苑」は、南砺市が志功を顕彰する条例を定めて設置している記念館です。
そばには当時暮らしていた家も残されています。
壁に描かれた絵から、志功の息吹を感じることができます。
道路拡張のため一時は壊されそうになりましたが、住民の保全運動を受け、当時の町が建物を買い上げ保存しています。
★南砺市 田中幹夫市長
「南砺市は市民の皆さんが自ら、棟方志功さんでまちづくりをしていきたいというメンバーが集まっています」
「古くから自分たちの誇りに思っている 棟方志功さんを迎え入れた福光だと」
「みんなで次の世代に広げていくのが課題の1つでもある。ぜひ南砺市だけではできません。青森の皆さんと連携をして、楽しみながら盛り上げていきたい」
南砺市で活動する志功の研究家で、初孫でもある石井頼子さんはこう話します。
★棟方志功研究家・志功の初孫 石井頼子さん
「福光でこんなに棟方が愛されていることは本当にうれしいことですが、でもやっぱり生まれたところの青森 棟方が一番愛した」「そこでやっぱり棟方を忘れずに、棟方のことを理解してもらえたらうれしいなと思います」
志功の故郷の現状に複雑な思いを抱いています。
★棟方志功研究家・志功の初孫 石井頼子さん
「青森市としての棟方志功記念館がないというのは、さすがに寂しいなという思いはあります」
「(現在は)県立美術館の常設展示室の中での展示ということで、これからやっぱり記念館として(顕彰)活動ができると良いなと」
視察を終えた一行は…。
★千葉看板 千葉滋社長
「志功の名前は残さないといけないなと逆に福光に来て感じました」
★青森商工会議所ワーキンググループ座長 成田本店 成田耕造会長
「青森と比較するのがおこがましいくらいこちらのパワーというか奥の深さが身にしみました」
「今ここで(棟方志功の)名前を消してしまうと一生の恥になってしまいますので」
青森商工会議所の部会は、きょう青森の旧記念館も視察しました。
青森市は 今後、建物や庭を残し、青森ゆかりの芸術家の功績を学ぶ施設として活用するとしていますが、具体的なスケジュールは未定のままです。
★青森市教育委員会文化学習活動推進課 東條英哲課長
「棟方志功画伯は青森市の名誉市民第1号でもあるので、とても重要な青森市の財産です」
「現在としては市の他事業がいろいろあるので、調整をしながら今後県と財団(財団法人棟方志功記念館)と協議をしていく」
青森商工会議所は一刻も早い利活用を市に働きかける方針です。
★青森商工会議所ワーキンググループ座長 成田本店 成田耕造会長
「(棟方志功の)作品が県立美術館にあるということでは、責任が果たせていないのではないかと」
「志功さんの名前を残した建物にしていただきたい」
「ここの地域一帯の庭も含めた利活用をぜひお願いしたい」
志功が愛したふるさと・あおもりは、どうやってその功績を後世に伝えるのか。
顕彰のあり方が問われています。