「とにかく全然足りない…」苗木と花粉が不足!?豪雪被害からの再起を目指す“青森りんご” 産業を陰で支える種苗会社の奔走に密着

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青森 2025.06.02 20:14

特集は大雪により過去最大203億円の被害が発生した県のりんご産業です。
いま問題になっている苗木不足や花粉不足を解消しようと奔走する、弘前市の種苗会社を追いました。

★宮下知事
「りんご苗木の安定供給に向けた総合対策としては、県内の苗木業者への増産要請」

大雪により過去最大203億円の被害が発生した県のりんご産業。
県はりんご園再生の対策のひとつとして、不足する苗木推計15万本の増産を種苗会社に要請するとしています。

年間25万本の苗木を生産している弘前市に本社がある原田種苗です。
社長の原田寿晴さんは、高値で売れる品種の苗木は慢性的に不足していると言います。

★原田種苗 原田寿晴社長
「5年くらい前から苗木不足です。出る品種が固定されてきたんです。しかし苗木屋はいろんな苗木を作っておかないといけないから」

苗木の生産には時間と労力がかかります。
先月、青森市の倉庫では台木と言われる根を張る木に、りんご品種を接ぎ木する作業が10人で行われていました。
これを畑に植え、2年から3年育てて生産者に販売します。

原田種苗では8年程前から、雪の少ない宮城県や北海道で苗木の増産に向けた研究をしています。

★原田種苗 原田寿晴社長
「これから私たちも雪のない地域(他県)で少し苗木を増産したいと計画を立てまして、3年後にはあとプラス10万本ぐらいは出来ると考えています」

特に不足しているのは高密植栽培の苗木です。
原田種苗では次世代の担い手を育てようと。平川市の柏木農業高校の生徒に栽培方法を教えています。

★柏木農業高校 佐藤凜央さん
「台木に切れ込みを入れていく作業が今回初めてで、どのくらい力を入れたら良いのか全然分からなくて、そこが一番大変でした」
「高密植栽培の普及のために、もっと苗木を生産して、すぐに手に入りやすいような環境をつくっていけたら」

★原田種苗 原田寿晴社長
「生徒たちに教えた接ぎ木とか取り木の作業が出来る人が足りない」
「接ぎ木の技術を教えて苗木生産までもっていくには高校生から教えていく必要があると思っています」

一方、りんごの花粉不足も深刻です。

★原田種苗 原田寿晴社長
「これから福島にりんごの花を 早く花が咲くりんごの品種を見に行きたい とにかく花粉が全然足りないです。ないですもう。花粉が」

おととし中国で植物の病気の火傷病が確認され、りんごの花粉の輸入が禁止されました。
そのうえ県内では、去年からマメコバチが減少しているため、人工授粉での対応が呼びかけられ花粉の需要が高くなっています。

片道4時間かけて到着したのは、福島県飯坂町の佐藤宏一さんの園地です。
8年ほど前から、りんごの花粉を取るための木を育てていて、ちょうど花が咲いていました。

★福島のりんご生産者 佐藤宏一さん
「がさっと(花を取る)花が小さいけどヤクは同じ」

花粉は通常採取したら次の年まで貯蔵して使います。
ただ1年間の貯蔵コストが必要になるというデメリットもあります。

これはミクロマルスという早咲きの品種で、桜のソメイヨシノと同じ時期に開花します。
ふじの開花よりおよそ2週間早いため、同じ年に花粉を採取して人工授粉ができると期待されています。

★原田種苗 原田寿晴社長
「輸入花粉自体が入らないので、福島とか宮城とか暖かい地域でこれを花粉専用の園地を作って、国内花粉を増産して青森で農家の皆さんにやってもらえればいちばん良い」

原田さんは県のりんご産業を未来につなげるため、苗木や花粉不足を解消しようときょうも奔走しています。