■シリーズ逸品A西和賀の創作鉄工(岩手県)
シリーズ「逸品」です。2回目は、西和賀町の工房から生み出される唯一無二の鉄製の逸品を紹介します。
きょうの主役の鉄をメインに扱う工房を訪ねました。作品が置いてあるギャラリーには、どこか温かみを感じる雑貨や生活用品が並んでいます。
山のうえアイアン 田中正博さん
「僕がやっているのは、ロートアイアン・鍛鉄(たんてつ)という分野で作品を作っていて、主にエクステリア、インテリアとか装飾的な鉄の製品を作ったりしています」
西和賀町左草。のどかな自然の中に「創作鉄工」の工房「山のうえアイアン」はあります。ロートアイアン・鍛鉄とは、ヨーロッパの建築や家具の装飾に施されてきた伝統的な加工技術のこと。切断した鉄棒や鉄板を熱し、ハンマーを使って叩いて形を作ります。
田中さん
「他の金属とかと比べると加工しやすいと思ってて、叩けば伸びるし、潰れるし、曲げられるし、自由に形が変化させられるというのがすごい良いなと思って」
この日、作っていたのはオーダーメイドのベンチ。実はこのベンチの脚には、鉄の角材を使っているのですが、わざわざ丸い棒の素材を四角に加工して仕上げています。
田中さん「そのままの角を使うと味気ないというか。鉄の表面の質感がとかがすごく良いので、それが見れるように、わざと丸から角にしてって」
田中さんの作る家具は、シンプルなデザインが多い印象です。ただ、ひとつひとつ手作業で生み出した作品は、唯一無二、そして鉄ならではの重厚感がある表情が漂います。
田中さんは、鉄を扱う仕事に憧れて、埼玉県にある職業訓練校や鉄加工業での修行を経て、2021年、同じ町出身の奥さんと西和賀町に戻ってきました。現在、工房のすぐ隣に家を構え、親子4人で暮らしています。
妻の美咲さん
「埼玉で学んで(それを)やっぱり地元で(還元して)そういった活動をできるのはとても良いことだと思います」
田中さん
「自宅と作業場が近いというのもあるし、いま妻が家に居てくれるしでこっちに帰ってきてからの方が個人的にはすごい仕事やりやすくなったなという感じはしますね」
西和賀にUターンしてから生まれた作風があります。ふるさとの自然環境をモチーフにしたモノ作りです。
田中さん
「西和賀って自然が豊かってイメージだし、実際そうなんですけど、鉄ってそれと真逆で工業的で冷たいイメージですけど、やっぱり周りのものから、こうイメージ、影響受けて物作ることも多いので、西和賀だからできるものなのかなって思っています。柔らかいイメージで見て楽しんでもらえるのを意識して作っています」
田中さんが現在、取り組んでいるのは、5月中旬に盛岡のmonakaで行われるイベント用の雑貨作りです。鉄の風合いを生かして一つ一つを丁寧に手作りする、いわば一点モノ。
こちらは鉄板を使って…かわいらしいクジラの蚊取り線香ホルダー。穏やかな気持ちにさせてくれる作品です。
積み木、ならぬ積み鉄。ひとつひとつ表情が違います。
台が付いた鉄のサイコロ。これも丸い材料から四角に仕上げた逸品です。
鉄以外にも、軽く錆びにくいチタン、そしてステンレスや真ちゅう、銅なども扱うそうです。
田中さんは、YoutubeやSNSで情報発信を積極的に行なっています。自分のことだけではなく、作家仲間の作品紹介も。この日は、水分を含んだ生木から作ることで変形する作品づくりをしている「waranoue(ワラノウエ)」を訪ねました。
工芸品紹介だけではありません。そのあと向かった先は、今月オープンする一棟貸しの宿「ネビラキinn」。田中さんは、資金を集めるクラウドファンディング用の映像を担当しました。西和賀の秘めたあらゆる力を発信し、町が盛り上がる機運になればと言います。宿を彩る家具には、田中さんの作品もありました。
田中さん
「ここでやってること(創作鉄工や映像発信)が何かいい影響があればいいなというか、もっと色んな人が来てくれたりとか、西和賀を知ってくれるきっかけになるんであれば、それはすごくいいことだなと思ってます」
西和賀だからこその「創作鉄工」、そしていろんな人との広がる輪。「山のうえアイアン」の活動は温もりを育てます。
(参考)
「山のうえアイアン」では作品制作だけでなく、1人から簡単な鉄工体験ができるそうです。また作品は、工房のギャラリーのほかに、道の駅・錦秋湖の展示コーナーで販売しています。
5月17日(土)、18日(日)には、盛岡市のmonakaで行われるイベント「ふらっとマルシェ(1Fmonakaひろば)」の中でも雑貨を販売するそうです。
★山のうえアイアン 西和賀町左草1−94 080-1832-7896 田中正博さん
(05/08 18:17 テレビ岩手)
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